「神学のアマチュアリズム」2007年5月8日(火)

神学モノローグ

4月初めのジェームズ・フーストン師による公開講座「心の井戸を掘るーポストモダンの行く末を見据えた牧会を目指して」に参加することができた。同時にフーストン師の新刊『喜びの旅路』(Joyful Exiles)が出版された。フーストン師ご自身の世界であり、聖書の世界であり、文学の世界であり、神学の世界である。自分の狭い世界を脱出して神の国を求めて彷徨う異邦人として、真の自分に出会い、神に出会い、友に出会う旅人の物語である。すでに80歳になられてもその旅を続けている、そんな思いが伝わる公開講座であった。

そしてその週のイースターの前に、友人の小泉一太郎さんを前橋に尋ねることができた。大村晴雄先生の下で30年前に一緒に勉強をさせていただいた先輩である。小泉さんは教育哲学をされ、後に群馬大学教育学部の教授になられた。私の故郷の前橋に住まわれている。オックスフォド大学史を専門とされている。近著『19世紀オックスフォド大学の教育と学問』(近代文芸社)をすでに滞在先に送ってくださった。

奥様の手料理をいただきながらオックスフォド大学の精神の話になった。小泉さんは毎年のようにオックスフォド大学を訪ねている。私はジョン・ヘンリー・ニューマンしか知らないのであるが、小泉さんはオックスフォド運動に関わった人たちを自分のことのように話をされる。その人たちの息吹をいただいている。

フーストン師がオックスフォド大学で地理学の教授として長く教えていながら、カナダのリジェント・カレッジに渡って、「たましいの地理学者」として霊性神学を教えてこられたことを小泉さんに話をした。そうしたら、それこそオックスフォド大学の精神であると言われた。学生はすでに古典、ギリシャ語、ラテン語をマスターしていて、さらに聖書、ヘブル語に通じていて、その上で自分の専門を究めていく。それでいて人間の理解を深めているので、大学の外の人たちにも通じるものをしっかりと身に着けているという。専門を越えて交流の輪も持って意見を交換しているという。

その代表的な例がC.S.ルイスだと言われて納得できた。彼は中世英文学者としての専門を持っていながら、『ナルニア国物語』という子供の心にも入っていけるファンタジーが書けたのである。言われてみたらトールキンの『指輪物語』もそうである。インクリングズという文芸の会でお互いに刺激し合いながら書いたと言われている。さらに考えてみたらジョン・ウエスレーもオックスフォド大学の出身である。現代ではアリスター・マクグラス師が歴史神学教授として活躍している。分子生物学の博士号を持っていて、神学の教授として活躍している。『信仰の旅路たましいの故郷への道』(いのちのことば社)という信仰書も出している。

小泉さんは、オックスフォド大学の精神はアマチュアリズムであると言われた。逆説的な響きがして驚いた。しかし小泉さんは、それぞれの専門を究めていながら、だれにでも通じるものを持っているのがアマチュアリズムだと言われた。小泉さんの本を読んでさらに納得した。それは古典に通じ聖書に通じることで、人間への深い理解と「気高く柔軟な精神の開発」を目指しているからだと分かる。何も知らないというアマチュアリズムではなく、ある専門を窮め尽くしていながら、だれにでも通じる心をも養っているのである。小泉さんの本も専門書なのですが、その精神を継いでいる。19世紀のオックスフォド大学の息吹を感じながら読むことができる。

この意味でのアマチュアリズムは聖書理解と神学にも通じるのであろうと考えさせられた。ギリシャ語とヘブル語で聖書を学んで、神学を学んだことで、専門家に収まっているのではなく、逆に人に対する深い理解をいただくことである。むしろ人間に対する深い理解の上に聖書を解き明かしていくことである。アウグスティヌスの『告白』はまさにそうである。カルヴァンが『キリスト教綱要』の初めで言ってる、神を知る知識と自分を知る知識の一致である。

福音派の神学校もそれなりの歴史を持ってきて、科目としての聖書と神学の教授ができるようになった。その反面、聖書の専門家とそうでない人という区別ができてきた。自分たちの聖書理解とその方法を絶対化してきた。現実には人間に対する理解を欠いてしまった。フーストン師が指導してきたリジェント・カレッジはだれにでも開かれた神学校である。教授も学生もともに人間に対する理解を深めていく神学の姿勢である。それは取りも直さず自分を知ることの神学である。

 

上沼昌雄記

 

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