「受肉・再考」2007年12月4日(火)

神学モノローグ

クリスマスのシーズになると、どうしてもキリストの受肉の意味を考える。というのは、キリストが肉をとったことが救いであり、救いの始まりであるからである。単なるキリストの誕生の喜びではないと思うからである。肉をとらなければならなかったキリストの悲痛な叫びであり、そのように御子を遣わさなければならなかった父なる神の痛みである。誕生の喜びより、受肉の重さへの同調である。

クリスマスを何度か迎えている時に、確かに救い主の誕生であるので、喜びがあり、祝いがあるが、しかしある時から、クリスマスが単に救い主の誕生のお祝いで終わっていることに多少の疑問も持つようになった。クリスマスのメッセージで救いを語り出すと十字架にすぐに結びつけてしまって、救いが受肉と結びついていないことに不思議に思うようになった。

クリスマスが十字架のための備えだけであって、救いのためであると理解されていない教会の歴史、神学の歴史に気づいた。そのような神学的な理解が、自分も学び、教えたことのなる神学校の信仰基準で語られていることが分かった。「われらの主イエス・キリストは、真の神にして真の人であられる。主は聖霊によってみごもった処女マリアより生まれ、世の罪のために十字架の上で死に、三日目によみがえられた。主は天に昇り、神の右に座し、われらのために大祭司の務めをなしておられる。」

処女降誕を強調しているのが分かる。そして「世の罪のために」というのは十字架から結びつけられている。プロテスタントの福音派の教会、神学校は同じような理解を取っている。当たり前のように思ってきたのであるが、どうも教会の歴史のなかでは全く違った視点を持っているようである。すなわち、受肉と救済がしっかりと結びつけられている。325年のニケア信条をみるとよく分かる。

「主は、神の子であり、父から生まれたひとり子である。すなわち、父の本質から生まれたお方であり、神からの神、光からの光、真の神からの真の神であり、造られたものではなく、父と本質を一つにしているお方である。すべてものは、天にあるものも地になるものも、この方によってできた。主は、私たち人間のため、また私たちの救いのために降り、肉をとり、人となられた。そして、苦しみを受け、三日目によみがえり、天に昇られた。」

以上から分かることは、救済を受肉から始まるとみるか、十字架から始まるとみるかの違いである。結構大きな違いである。聖書全体の捉え方の違いをもたらしている。教会史を遡りながらその違いを確認する以外にない。大変な作業である。避けることはできない。ここではいくつかの点だけをみておく。

第一に、パウロがロマ書8章3節で言っていることを確認しておきたい。「神はご自分の御子を、罪のために、罪深い肉と同じような形でお遣わしになり、肉において罪を処罰されたのです。」ここでは「罪のために」というのが受肉と結びつけられている。少なくとも受肉と救済とをしっかりと結びつけているのが聖書の視点であることが分かる。プロテスタントでは義認論の強調とともに受肉論が救済論から落ちてしまっている。それが聖書の教えであると思い込んでいる。その視点で聖書を読む枠組みから抜け出せないでいる。

次に、受肉論と救済論とがしっかり結びつくことで、受肉、十字架、復活、昇天が救済論の全体として捉えられてくる。すなわち救いの意味は、受肉から始まって復活と昇天を持って終わるという意味合いが出てくる。十字架による義認論だけが過度に強調されることはない。聖書の理解の視点、そこから出てくるキリスト者の生き方の違いを生み出してくる。

そして取りも直さず、受肉の現実、まさに肉をとらなければ救いが成り立たない神の救いの意味が前面に出てくる。肉を持つものの罪の深さの理解と、肉を持つものの弱さへ同調である。肉を持つものすべてへの同情である。パウロがロマ書8章3節で述べている受肉の理解の深さと、その前後で語っている、自分の罪の理解の深さと、なお達し得ないで苦しんでいる自分の心の中のうめきの深さと、さらに被造物のうめきの深さが結びついてくる。

降誕節を否定しているのではない。また自分たちの立っている信仰基準を否定しているのでもない。違った視点で見ることで聖書の理解を深めたいのです。少なくとも、このクリスマスが単なるお祝いで終わってしまうのではなく、肉に対する理解を深め、肉を持つものへの同調と同情を深めたいのである。

 

上沼昌雄記

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