「火種」2008年4月7日(月)

 しばらく前に2年ほど家を空けていたことがあります。その間ときど
き戻ってきて、夏の山火事の予防のために、落ち葉や雑草を刈り取り、
刈り集めて山のように積み上げていました。敷地のなかで一箇所開かれ
たところがあって、そこに結構な山になっていました。冬場の雨で内側
は湿っているのが分かります。何とか燃やしてきれいにしたいと思って
いました。燃やせるのは4月いっぱいです。5月からは夏の気候で乾燥
するので、一切燃やせません。燃やせる期間でも営林局に電話して、燃
やせる日かどうか確認しなければなりません。

 過日も、少しずつ小さくなっていく落ち葉の山を燃やしました。枯れ
木を集め、新聞紙を入れて、それにガソリンをかけて引火します。初め
に乾いた落ち葉を入れて、火が確実に燃え上がるのを待ちます。その上
で多少湿っている落ち葉も燃やしていきます。そこまでくれば火は燃え
続けるのが分かります。それで先日は、大きな枯れた樫の木があったの
で放り込みました。

 同時に、隣の家の境に溜まっていた落ち葉も刈り集め燃やしました。
隣のご夫婦は家の敷地を公園のようにきれいにしているし、山火事のこ
とを気にかけているようなので、またその境に自分たちの物置を作った
こともあって、こちらも何とか境界線をきれいにしたいと思いました。
外で仕事をしていたご主人と立ち話もしました。妻も出て来てしばらく
話をしていました。

 そんなことで境界線をきれいにして、そこで集めたものも燃やして、
積み上がった山のような落ち葉を、燃える火にかざし終わったのが夕方
7時頃でした。すでに5時間以上は燃やしていました。その時点では燃
えさかっているのではなくて、煙だけが立ち上がって内側から少しずつ
燃えていく状態でした。それは3メートル×2メートルの楕円形状で、
高さは1メートルありました。

 明日の朝まで燃え続けていずれ灰になるだろうと思いながら、しばら
くその煙を出している山を眺めていました。煙が出ているところからと
きどき火花が立ち上がって燃え上がっていきます。それでも全体が燃え
上がるのではないのです。こちら側が少しだけ燃えだし、それでいった
ん消えて、また別のところが同じように燃えだして、消えていきます。
その度に山が小さくなって行くような感じがします。かすかな煙は風の
動きに合わせて、時には水平に飛んでいき、時には旋回しながら舞い上
がっていきます。

 そんな煙を出す山は、内側にしっかりとした火種を持っています。そ
の火種に温められながら少しずつ外側が燃えていくのが分かります。そ
れでも内側は見えないのです。掘り起こせば分かるのですが、それより
もどのように燃えていくのか興味があり、眺めていました。煙だけが上
がってきて、火種は見えないのです。それでも確実に燃えていくので
す。空気は冷たくなっても、その火種で温められます。暗くなってきて
妻が迎えに来たので引き上げました。明日の朝はどのようになっている
のか興味がありました。

 次の朝も煙が上がっていました。うれしくなって妻にも報告しまし
た。何がうれしかったのか分からないのですが、ともかく伝えました。
現場を見に行きました。確かに燃え切って灰の小山になっているのです
が、ある一箇所はまだしっかりと煙を出していました。出かけて帰って
きて夕方にまた見に行きました。ほんの少しだけ煙を出しているので
す。そしてその灰の小山のなかに、まだ真っ赤な炎を付けているものが
ありました。24時間以上前に投げ込んだ樫の木でした。乾いた落ち葉
をかければ火がついて燃え出しそうです。しっかりと火種となっていた
のです。

 樫の木は、どうにもならない男性の堅さを表すように用いられていま
す。そんな夫婦のやり取りを思い出します。その樫の木がしっかりと火
種となっていたのです。消え入りそうなときも、いつでも燃え上がる火
種の役割をしていたのです。燃えるものがかけられ、どこから吹いてく
るか分からない風を受けて、いつでも燃え上がるのです。そのような火
種は、私たちひとりひとりのうちにもあります。また、私たちの間にも
あります。そう思うと、心が熱くなってきます。

上沼昌雄記

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