「アブラハムの旅」2008年7月7日(月)

ウイークリー瞑想

 信仰の歩みを「旅」として、ヘブル書の著者が見事に表現していま
す。昔の人々はその信仰によって称賛されています。アブラハムの信仰
はまさに、その旅ということばがそのまま当てはまることでした。生ま
れ故郷、父の家を出て、どこに行くのかを知らないで旅を始めました。
と言ってもひとりではなく、家族を連れ、親族を連れて旅を続けたので
す。当然家族を養い、食べさせなければなりません。異国の王、異国の
民との間で争いが起こり、政治的な策も練らなければなりません。

 約束の地に確かに入っています。ただ他国人として、寄留者として滞
在しているだけです。相続財産として受け継いでいるのではないので
す。家族を葬るための土地を購入しなければなりません。約束は果たさ
れないままで生涯を終えていきます。

 話が前後します。約束の地はそこに子孫の繁栄が当然含まれていま
す。その子孫をいただくためには余りにも歳をとりすぎていました。妻
もそれを知っていました。それで女奴隷を通してイシュマエルをもうけ
ます。それでも祝福を受け継ぐ子孫ではないのです。旅人にしては余分
なものを身に受けることになります。そしてようやくアブラハム夫婦の
笑いを引き起こすかたちで、神の約束は果たされます。イサク(「彼は
笑う」の意)をいただくのです。

 そのイサクをささげることについてさらに言い及んでいく前に、ヘブ
ル書の著者は信仰の人々の歩みを地上での旅人、寄留者と呼んで、その
あり方を美しくまとめています。取りも直さず、この人たち自身が自分
たちを旅人、寄留者と「告白していた」(11:13)と見ています。
それは目指している故郷が、本来自分が求めている「自分の故郷」であ
りながら、それでも「出て来た故郷」ではなく、さらにすぐれた故郷で
あることを理解しているからです。

 信仰は、自分を出ていくことです。出て行って、決して出て来た故郷
に戻らないことです。出て来た自分に返らないことです。それでいて本
来の自分の帰るべき自分の故郷が目指している先にあることを示してい
るのです。それはいつも先にあるのです。よりすぐれた故郷です。天の
故郷です。それでありながら、ただその先を見ているだけで、現実には
その手前でたじろいでいるのです。ですから厳しいのです。

 家族の世話があり、甥のロトとのことで戦いに巻き込まれ、政治的な
やり取りをしなければならず、その上自分は歳をとってきて子孫をもう
けることもできなくなっているのです。もう諦めてどこかで妥協したく
なります。自分を受け継ぐものが自分の子どもではなくて、ダマスコと
のエリエゼルでも構わないと思ってしまいます。それくらいでも自分は
何とか妥協できると思い、それで納得させようとします。しかし旅はそ
れを許しません。留まることができないのです。妥協ができないのです。

 もういい加減旅を終えて落ち着きたいのです。結構人生でいろいろな
ことをしてきたのでこの辺で退いて、落ち着いた生活に入りたいので
す。確かに、出て来た故郷に帰ることが旅の目的地であればそれは考え
られます。しかし、そうはできないのです。旅は終わっていないので
す。次に進んでいかなければならないのです。その先にいつも目指すべ
き目標があるのです。

 うんざりしても、挫折しても、怪我をしても、病気になっても、次に
進まなければなりません。約束のものはいつもその先にあるからです。
また今いただいていることが信仰の結果と言えないのです。仕事でも奉
仕でもそれなりの成果を見ることができても、それが信仰の結果と言え
ないのです。そう思った途端旅は終わってしまいます。信仰は死んでし
まいます。その先にあることを見ていることだけが信仰のしるしなので
す。

 約束の子であるイサクが与えられたので、それでホッとしたいので
す。これで自分の人生は大丈夫と思いたいのです。そんな思いを打ち砕
くように、その子をささげるように神は言うのです。示されたモリヤの
山に行くまでの3日間アブラハムは沈黙を守りました。何か信仰の厳し
さと重みに耐えているかのようです。自分のうちには決して留まれない
で、最後の最後まで出て行かなければならないのです。信仰の旅の厳し
さです。

 上沼昌雄記

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