「アブラハムとイサク、父と子」2007年7月15日(火)

ウイークリー瞑想

 信仰の旅が自分を出て、決して出て来た故郷に戻るのではなく、ただ
向こうにあるよりすぐれた故郷を求めるものであることを、アブラハム
の旅は語っています。戻ることができるものであったらどこかで旅を止
めてしまうことも、その場で落ち着くこともできます。それでも、一見
それなりの信仰者としての恵みをいただいていることになります。そん
な妥協もしたくなります。

 家の相続人をいただくことはそんな妥協にもなりかねません。いただ
ければ自分の使命や意志を子にゆだねることができます。現実にはどう
見てもそんな可能性はありません。どんどん歳をとっていくだけです。
ダマスコのエリエゼルでも構いませんと言いたくなってしまいます。

 そんなやり取りの後に、主はアブラハムを外に連れ出して天の星を見
せるのです。アブラハムから出る子孫の約束です。彼はそれを信じまし
た。それで義と認められました。しかし、それで終わっていないでやり
取りが続きました。それに疲れたかのようにアブラハムは深い眠りに陥
りました。そしてひどい暗黒の恐怖に襲われたのです。そのなかで、自
分の子孫が後に遭遇するエジプトでの400年の奴隷状態とそこからの
出エジプトの予告を聞くのです。

 そんなことがありながら、さらに信じて義とされたことも忘れたかの
ように、妻の女奴隷を通してイシュマエルをもうけるのです。アブラハ
ムはどうしたのでしょうか。それでも神の約束は変わることなく、約束
の子イサクをいただくのです。ただそんな約束を笑ってしまっているの
です。ともかく何とか相続人をいただくのです。

 アブラハムは、これで大丈夫と思ったかも知れません。そう思いたく
なります。今度はそのイサクをささげるように神は言うのです。言われ
たアブラハムは何を思ったでしょうか。何も記されていません。ですか
ら想像する以外にありません。ただいろいろな思いが去来したことは想
像できます。アブラハムのこの沈黙をどのようにとらえるのかは、多分
私たちの信仰の姿勢にも関わるのでしょう。

 ともかくアブラハムはイサクをささげたので、もう一度取りかえした
のです。すでに自分のものではないのです。自分の跡継ぎでありなが
ら、自分のものではないのです。イサクの嫁探しの話が続きます。決し
て出て来た故郷に連れて行ってはいけないと、しもべにはっきりと命じ
るのです。イサクも父アブラハムの出て来た故郷には戻れないのです。
ただイサクの妻はアブラハムの故郷から連れて来られるのです。

 アブラハムの旅は、出て来た故郷に決して戻らないで、示された地に
向かっていく果てしない旅です。子がそれを引き継いでいきます。旅の
バトンを引き渡していくことです。イサクがバトンを引き継いで旅を続
けていくのです。結果的にはそれでことが進んで、目出度しとなりま
す。しかしその引き渡しは、単純な連続ではなく、むしろ綱渡りのよう
な引き継ぎです。

 アブラハムにとってイサクは、子でありながら子でないかのようで
す。ただ信仰によって与えられた子であり、信仰によってささげなけれ
ばならい子でした。自分の子でありながら、どこかで神の子です。自分
の手を出せない、超えた存在でもあります。それでも、イサクの妻は自
分の故郷から連れてこなければならないと分かっていました。子に対す
る父の責任でした。

 アブラハムはひとり子であるイサクをささげるように言われたとき
に、父親である意味を知らされたかのようです。子であっても自分のも
のではなく、それでいて自分に与えられた旅を引き継いでいく相続人な
のです。子であるので、自分の旅を引き継いでくれるのですが、子であ
るのでまたそれは自分のものとは異なった旅の始まりとなるのです。

 子は父の子でありながら、父とは異なった旅を始めるのです。そうす
ることで子であることを知るのです。父は子に旅のバトンタッチをして
も、単なる繰り返しではなく、新しい旅が展開されることで父であるこ
とを知るのです。新しい旅に何が起こるのか知ることもできません。自
分以上の困難に遭遇するかも知れません。脇道にそれてしまうかも知れ
ません。挫折してしまうかも知れません。それでも父は手を出せないの
です。

 子孫が異国の地で400年の奴隷状態なることの予告を思い出しま
す。ただ心に留めておくだけです。すでに子の旅は始まっています。そ
んな未知の旅へのバトンタッチをすることで父親であることを確認しま
す。それはどこかで、ひとり子である御子を遣わした父なる神に思いを
馳せることを許してくれそうです。

 上沼昌雄記

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