「闇、やみ」2008年8月25日(月)

ウイークリー瞑想
 ある時に、今こそ「闇」のテーマを書くべきだと思わされました。2 年ほど前の秋から冬にかけてでした。闇のテーマは心のなかに長く留 まっていましたが、不思議に今がその時を思わされて、ともかくどこに 行くのか分からないまま書き出しました。置かれた状況が促してくれた ところもあります。季節も暗い冬に向かっていました。実際に暗いうち に起き出して、と言うより、目が覚めてしまって、空が明るくなるのを 見上げながら書き続けました。暗闇のなかで手探りをしながら書きまし た。

   信仰をいただいているので前進をしたいのですが、どこかでいつも 足を引っ張る力が働いています。同時にそんな闇の世界に惹かれている 自分がいます。ダビデがそんな力に引き込まれるように罪を繰り返して しまいます。律法をしっかり守っているパウロにどうにもならない「む さぼり」があります。それはまさに自分の姿です。置かれた状況はそん な自分をみることを促してくれました。むしろそんな自分に対峙させら れました。

 初代教会の教父たちが闇のテーマをしっかりと見つめています。16 世紀の十字架の聖ヨハネに『暗夜』という本があります。教会史の上で は真剣に取り上げられてきています。私たちの間では解決済みのテーマ のように思われています。しかし現実に直面させられます。

 村上春樹が場面を変えながら闇のテーマを取り扱っています。『ねじ まき鳥クロニクル』では、井戸の底に下りていくことで真実に対面して いきます。ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』を基にしてフランシス・ コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』が出来ています。大村先生は「日 本人の根底にあるドロドロしたもの」と言います。レヴィナスは「自分 自身の闇のうちに引き籠もる仕方」と言います。

 最後に、詩篇18:11で「主はやみを隠れ家として、回りに置かれ た」と言われています。言い知れない慰めをいただきました。神は光で す。しかし、光である神がそのままで私たちに対峙するかわりに、やみ を回りに置かれたのです。そのやみの向こうに自分の闇を見つめながら 入ることを待っておられるのです。それでタイトルを『闇を住処とする 私、やみを隠れ家とする神』としました。

 次の年の春、すなわち、今から1年半前に出版社に送りました。その 前に3人の友、小林基人牧師、坂本献一牧師、坂野慧吉牧師に原稿を読 んでいただきました。それぞれ何とも言えないコメントをくださいまし た。坂野牧師との会話で、最後に「これは誰を相手に書かれたのです か」と聞かれました。一瞬返事に困りました。誰かを想定して書いた思 いはありませんでした。それで「自分のために書きました」と言いまし た。「わかりました」と言われました。

 出版社のいのちのことば社から二度ほど「無理です」と言われまし た。「闇」のテーマであり、どうしても暗いイメージがあり、ともかく いのちのことば社も大変躊躇したようです。同時に私のなかで何とかこ のテーマの本を出していただきたいという強い思いがありました。3人 の友も励ましてくれました。販売に最大限の努力をしますと意思表示を して何とかお願いしました。

 この9月からの日本での奉仕にあわせて出してくれることになりまし た。すでに印刷に回っています。この本がどのように受け入れられるの か祈りのなかにあります。多くの人たちに届いてくれればと言う願い と、どこかで自分の闇を表に出すようで、印刷を止めて、そのまま闇の なかに葬りたい気持ちもあります。決して自分のことだけを書いている のではないのです。ダビデとパウロに沿いながら、『ねじまき鳥クロニ クル』や『闇の奥』を紐解きながら、自分の闇を見つめようとしている のです。

 出版を強く願いながら、同時にためらいがあります。やはり「闇、や み」です。そのまま静かにしておきたい思いもあります。しかし現実的 には、出版を引き受けてくれたいのちのことば社に少しでも益になれば と願います。同時に私の分からないところで、私の関わりのないところ で、必要な人に届いて、少しでも自分の闇を見つめる手がかりになり、 光を頂く助けになれば、何か心が落ち着きそうな感じです。

 上沼昌雄記
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