「行き所のない時間、置き場のない空間」2009年2月 2日(月)

ウイークリー瞑想

 先週の神学モノローグ「意に反した差異、過剰な差異」に関して、友
人の牧師からレスポンスをいただきました。「私のライフワークである
<神義論>についてです。それをすべて論理で説明することは、<神>
を論理に閉じこめることと思っています。そういう意味では、最終的に
<信仰的不可知論>が私の立場です。」何度も読み返し、思いを馳せる
ことになります。

 神義論(あるいは弁神論)は、神が義であり、善なる神であるのに、
なおこの世には悪が存在し、苦しみや痛みがあるのかという、誰もどこ
かで確実に心の中で問う問いを基にして論じられている議論です。その
典型的な例が、義人ヨブの遭遇する苦難と、それに対する3人の友人た
ちとのやり取りと、最後まで神を信じていくヨブの姿勢です。前回の記
事にそのヨブのことに触れました。

 ヨブ記をライフワークとしている別の友人の牧師がいます。今週研修
でサクラメント郊外の教会にグループを率いてこられます。金曜日にみ
くにレストランでランチョンを予定しています。ヨブ記をライフワーク
とされているというより、ヨブと同じ歩みを通されました。ヨブの友人
たちの無理解にも遭遇されました。苦しんでいる者への教会での二次被
害と言っています。

 意に反したこと、それは誰も避けられません。避けられない時の流れ
の中に置かれているからです。それで、私の存在する前からのものを否
応なしに受け継いでいます。時の経過と推移の中で父の咎を3代、4代
にわたって受け継ぎます。私の肉体も確実に老いていきます。高血圧と
高コレストロールの対応に迫られています。勝手に私の肉体に入ってき
ていると文句も言いたくなります。それ以上に、「病気は悪化していま
す」と言う短いメールを2週間前にある牧師からいただいています。

 また私の外のものが私に降りかかってきます。「自己に反した」とい
う言い方を、他者を視点に哲学をしているレヴィナスが言っています。
意に反して遭遇させられたホロコーストは、当然ユダヤ教徒であるレ
ヴィナスにヨブ記について書かせています。歴史に潜在している悪は、
善への突破口であるとまで言います。アウシュビッツでキリスト教の神
は死んだが、アブラハム、イサク、ヤコブの神はなお生きているような
ことを言います。そんなレヴィナスに惹かれてヨブ記に注目しています。

 日本の教会の戦争責任のことが真剣に取り上げられています。自分の
外のことで直接には関係ないことでも、記憶として確実に届いてきま
す。また戦争を通して明らかになった悪は、いまだに確実に影響してい
ます。村上春樹が小説で取り上げています。妻の失踪に、妻の家族の戦
争の時の悪が深く絡まっているという小説に、多くの若者たちが、世界
中の人たちが共鳴しています。戦争で暴露された悪が、いまでも生活の
回りに染み込んでいて影響しています。

 思いがけないかたちで苦難に遭遇したヨブ、神がサタンによってヨブ
を打つことを許されたこと、妻に呪われたこと、ただ黙ってじっと見つ
めている3人の友人たち、どうみてもこれが聖書かと思わされます。ヨ
ブは自分の生まれた日をのろうのです。その日が神からも顧みられず、
闇と暗黒の中で隠れて自分の意識にも上らないで消えてしまうことを望
むのです。しかし、ただ嘆くだけです。「死を待ち望んでも、死は来な
い。」(ヨブ記3:21)

 どうすることもできない思い、右にも左にも行けない、ただじっとし
て苦しみの中で耐えているのです。そんな自分を見つめているだけで
す。どこかに行って逃げることができれば希望があります。どこにも解
決の道はないのです。どうすればよいのかも分からないのです。苦難の
下にあることだけが分かります。そんなことが意識にも上らないで通り
過ぎてくれたらばと願います。しかもその苦しみはしっかりと意識の上
に留まっています。どこにも行かないのです。どこにも行けないので
す。行き所のない時間が、置き場のない空間のように心をじっと占めて
います。

 友人の言う「信仰的不可知論」を少しでも理解できたらばと願いま
す。理解できなくとも、「最終的に信仰的不可知論が私の立場です」と
言明されるその信仰に惹かれる思いです。

 上沼昌雄記

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