「現代哲学が語るもの」2009年5月5日(水)

 

神学モノローグ

脱構築、揺らぎ、差異、反復、他者、顔、痕跡、パロール(語ること)、エクリチュール(書くこと)、アンティ・オイディップス襞、器官なき身体、渇望、欲望機械、ノマド、等々。


代哲学の醸し出す異様な用語に、哲学を多少はかじっていても、かなりの違和感と疎外感を感じてきた。時代遅れで取り残された感じでいた。同時にそんな用語
を出してもどこにも行かないのではないかと思ってきた。それでも直感的には、そんな用語を振り回すことで何かを求めているのだろうと思う。もがきであり、
産みの苦しみでなのであろうとも思ってきた。さらに現実的には、そんな用語で表現される世界に子供たちは生き、その子供たちも生きようとしているのであ
る。

それでもそんな不可解な哲学の世界にもう一度引き込まれることはないと思っていた。しかし、
イデガーの対局にいるレヴィナスを読むようになって、かなり風向きが変わってきた。哲学の終焉のようなものを前世紀の初めに感じ取っていた終末感が、ヨー
ロッパでホロコーストを経験することで現実のものになった。その哲学の死からの再生を真剣に求めているのだと思うようになった。ホロコーストは、西洋の哲
学だけでなく、西洋の神学の死でもあった。そのホロコーストの生き残りといえるレヴィナスは、血肉を注いでその再生を求めている。その真剣さに打たれた。
ユダヤ教徒として旧約聖書を哲学の世界に押し出している。それしか再生の道がないかのようです。そんな視点と真剣さに感動した。


メリカにとっては、ホロコーストは対岸のものであった。アメリカの神学は勝利者の神学である。戦後はその力に乗って世界的な宣教がなされた。日本の教会は
その恩恵の中にいる。個人的にはそんな流れの中に組み込まれることになった。そんな恩恵を受けた日本の教会も、そんな恵みをもたらしたアメリカの教会も、
ここにきて前世紀の初めに哲学者が言い出した哲学と神学の終焉を経験してきている。勝者として築き上げた神学の行き詰まりを経験してきている。西洋の神学
の行き詰まりである。しかしそれは、聖書の行き詰まりを意味はしない。


イデガーの存在の問いは新しい道を開いた。しかしその何ともいえない神秘的な言い回しは哲学の行き詰まりでもあった。同時代人のヴィットゲンシュタイン
は、世界を言葉で説明しても、世界の意味を見つけることはできないといって、沈黙を哲学の結論とした。そんな哲学の終焉と死の現実から、現代の哲学者は何
とか再生の道を見つけ出そうとしている。それで脱構築とか、差異とか、欲望とか、一見過激と思われる用語を使い出している。


んなことがあっても人は生き、時代は流れ、社会はそれなりに機能していく。その始まりがどこで、どこに行くのかとは問わない。それには答えのないことを分
かっている。悟っている。ようやく悟ったともいえる。それでも時間は停止することはない。空間は消えることはない。命は継承されている。時代は生き、国は
生き残り、地球は存在し続ける。その現実の中での再生の道を探っている。力を起こし、新しい命を生み出す躍動感を求めている。


つての観念論哲学での世界の説明、神学による世界の始まりと終わりの説明ではホロコーストを阻止できなかった。そんな原体験をもって哲学に取り組んでい
る。かつての体系の揺れや、隙間や、外れに注目してきている。命の流動性、その襞の動きを見ようとしている。心の襞を注視し、心の闇を聴こうとしている。
他者のパロール、他者のエクリチュールを大切している。自分の論理よりも他者の語りに耳を傾けようとしている。優しい哲学を求めている。心痛める者のそば
に立つ哲学を求めている。


者の神学ではやりきれなくなっている。これをしたら大丈夫、この方法でしたら教会が成長するという勝者の方程式では取り入れられないものが出てきている。
揺らぎが生じ、差異をもたらしてきている。苦しむ者、痛める者のそばに立つ神学が求められている。答える神学ではなく、問う神学が求められている。語る神
学ではなく、聞く神学が求められている。子供たちのためにも、さらにその子供たちのためにも責任が課せられている。 

上沼昌雄記

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