「労働祝日」2009年9月7日(月)

ウイークリー瞑想

 この9月初めの月曜日はアメリカではLabor Dayの休
日です。夏が終わってこれから秋の収穫に向かって一生懸命に働く
ぞという前に、そんな堅苦しいことを言わないでともかく最後の夏
休みをゆっくり過ごそうというので定められた休日です。それが本
当の理由かどうかは知りませんが、多分そうなのだろうと勝手に想
像しています。Labor Dayを迎えるたびにアメリカ人のそんな
ユーモアに感心しています。実際にクリスマスや感謝祭に続いて
人々が旅行に出るときです。それでも今年は不況の影響でいつもよ
りはかなり少ないようです。

 そんななかであえて旅に出ることになったのは初めてです。いつ
もはもう日本人ですから夏は終わった、仕事をしなければと言う思
いと、そんな人混みのなかであえて旅行もしたくないと思って家に
いました。今回はそんな人が動き出す週末に妻とドライブを始めて、LA
郊外の妻の両親のところに来ました。そしてLabor Dayが終
わってから丸二日のドライブでテキサスのダラスに向かいます。こ
の8月に生まれた孫に会いに行くためです。そしてそのダラス
に妻を残して17日に日本に向かい、この秋の活動が始まりま
す。妻はその間ダラスで二人の孫と一緒です。

 このようにLabor Dayを過ごすのは初めてですが、さらに
Labor、すなわち、労働を意識したのも初めてです。労働と言っても
まさに肉体労働です。肉体労働と言っても糧のためと言うより生活
環境のためです。20年前にアメリカに移住したときはペンキ
塗りを数年しました。その時はまだ40代でしたが、今回は
60代の老体をむち打って、夏の期間中敷地の整備をさせられまし
た。山火事予防のために木を切ったり、枯れ木を集めたり、何年も
積み重なった枯れ葉を一カ所に集めたりと、カリフォルニアのまぶ
しい太陽の下ですることになりました。

 火災保険会社からこのままでは更新ができないから、きれいにす
るようにと言う通達が夏の初めに来たのです。今まで18年間
何の問題もありませんでした。どのようにするのかも何も言ってき
ません。妻が問いただしたら、消防署の基準に従って、しかもその
検査の証明書を送るようにと言うことでした。それでこの夏はゆっ
くりしようという楽しみは吹っ飛んでしまいました。だいたいの基
準は分かっていました。8年前には近くで山火事がありまし
た。いったん火がついたらば乾燥しきったこの夏にはあっという間
に広がっていきます。冬の雨で春先は緑であった雑草が、夏に近づ
くにつれて茶色になり、黄色になり、今では赤茶けてきます。事務
所のある街では先週は強風のために一日で60軒が焼け出され
ました。LA郊外の山では今でも燃えています。

 基本的には土曜日以外は事務所から帰ってきた夕方2,3
時間労働をしました。実はこの時間帯が一日で一番気温が高いとき
です。朝は結構涼しいのですが、夕方は40度近くになるとき
もあります。なるべく木陰を探して仕事をするのですが、どうして
も太陽の下にでないといけないときがあります。汗は出てくるので
すが、体を動かしているほどには汗をかきません。かくのですが乾
燥してしまうのです。 枯れ葉を一カ所に集めるために何度も
繰り返して太陽の下に出ます。 疲れて水分を欠いた体が焼け
出すのかと一瞬思います。そんな労働を木陰もない炎天下で一日中
している労働者のこと、そんな労働でアメリカを開拓してきた汗の
歴史を思います。大げさですがアメリカの開拓の疑似体験をしてい
る感じです。

 高く大きくなった杉や松や樫の木で、下の方は枯れ枝になってい
るものを切り取る作業は、枯れ葉から火が木に伸びていかないため
に避けられないことです。はしごをかけて延長ポールの先にのこぎ
りのついたもので切り取っていきます。はしごに寄りかかり、まっ
すぐに見上げ、10メートルぐらいのポールで枝を切っていく
のです。そんな木が何本もあります。首が痛くなります。心臓はこ
れ以上ふくれあがれないほど鼓動します。今まで使ったことのない
筋肉を使っている感じです。ヘトヘトになるのですが、枝を切るた
びに視界が開かれてきて、そこから吹いてくる風に癒されます。

 消防署と言っても営林局の消防署です。山火事担当です。町の消
防署は家の火災を担当します。その営林局の消防隊を3回も呼
んできていただきました。車寄せの周りの木をもっと切らない消防
車が入れないと言われたり、屋根に掛かっている枝を切った方が良
いと指導してくれました。夏場は忙しいときなのに、保険会社のこ
とで結構の呼び出しを受けているという。それでもとても親切で好
意的である。実際に山火事になったときにどの家を救い、どの家を
あきらめるかは彼らの判断に任されているという。そのためにも消
防車が入りやすいようにしておいたほうが良いと教えてくれま
す。3度目に来てくれたときにはよくやっととほめてくれました。

 実はこの旅行があるために期限付きの作業をしてきました。それ
で体をむち打ってでも終わらせなければなりませんでした。待った
なしです。それは土地に関わる農作業をしている人が直面している
ことです。最上川沿いの隠れ家から腰が曲がったおばあさんが炎天
下で農作業をしている光景を思い出します。毎朝農作業に出る前に
点滴に来る患者の話を聞きました。労働は好きなときに、好きなよ
うにできるものではないのです。からだがダメになりそうでもその
限られた時間のなかで終わらせなければならないのです。もっと根
本的には家族を食べさせるためには待ったなしにしなければなりま
せん。そんな労働を神は創世記の3章で定めているのです。と
ても厳しい、そして現実的な待ったなしの労働です。たとえそこに
収穫の実を味わうことができるという祝福があったとしても、どう
してもやり遂げないといけないことです。そんな労働で家の周りは
今までにないほどきれいになりました。山火事のないことを祈るの
みです。

上沼昌雄記

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