「オホーツクの流木」2009年10月5日(月)

ウイークリー瞑想

 札幌の西教会で知り合った吉田さんご夫妻が、北見の日赤病院の
院長として昨年赴任されました。惹かれるように、招かれるごとく
に昨年の秋、今年の春、そして先週とJRパスを使って伺いま
した。吉田さんご夫妻との交わりをいただきたいのと、道東の広さ
と美しさに惹かれ、スケジュールを何とか調整して、と言うより、
最優先のようにして伺いました。道産子の吉田さんたちも日赤病院
の責務がありながら、道東が大変気に入っているようです。馬鈴薯
とタマネギを初めとする農産物の豊かさ、さらに東に悠然と広がっ
ているオホーツクの海の幸を満喫されています。

 今回は旅行なしでゆっくり交わりましょうと言うことでしたが、
昼前後空けてくださり、オホーツクに瓢箪のように口を開けている
能取湖とサロマ湖に秋晴れのなか連れて行ってくれました。サロマ
湖はその瓢箪の中身は能取湖よりはるかに大きいのですが、両方と
も瓢箪の口がオホーツク海に開かれています。その二つの湖の間に
常呂町という漁港があります。そこは内陸の北見市が手を伸ばして
きて海に面している町です。そこで取れたばかりの魚と貝をそのま
ま乗せたにぎり寿司を「鮨の安さん」というお店でいただきまし
た。新鮮さという比較を超えた、その数分前までは生きていた魚が
海から直通でそのままテーブルに運ばれてきた感じです。

 最初に連れてきていただいたときに網走の町を外れてオホーツク
の海に接して、その静けさに心が打たれました。太平洋のあの大き
な波がどこの海辺でも打ち寄せているのかと思っていたのですが、
何とも静かにオホーツクの海が鎮座しているのです。呼びかけたら
海の向こうのどこかに届きそうです。もちろん冬には流氷が押し寄
せてきます。流氷館で疑似体験をしました。

 吉田さんの説明では、いわゆる北方領土の千島列島からカム
チャッカ半島に結びついて大きな湖のように囲まれているので、嵐
で荒れない限り静かだと言うことです。確かに太平洋とは区切られ
るようにオホーツク海は列島で囲まれています。網走から宗谷岬に
至る海岸もその静けさを受けたように荒らされることなく弓のよう
に伸びています。

 何か分からないのですが自分のなかの何かに結びついているよう
な気がして、その海岸線に打ち付けられた手に乗るほどの流木を拾
い上げました。それに合うような貝殻も見つけて大事に持ち帰りま
した。カリフォルニアの自分の机の上に置いてあります。そしてこ
の春に知床に連れてきていただいたときにも、海岸線で車を止めて
いただいて同じように手に入るほどの流木を拾いました。そうする
ことが一つの儀式のように、しないわけに行かなかったのです。流
木を拾うことで何かに自分が結びついているような感覚をいただけ
るのです。

 そんなことで海の匂いのする鮨をいただいたあとに、吉田さんに
またオホーツクの海に連れて行っていただいました。奥様を魚市場
に降ろして、あの村上春樹も走った100キロマラソンのコース
にもなっている原生花園を10分ほど横切って、紺碧のオホー
ツクが広がってきました。海辺の向こうに消えそうな砂浜には釣り
人が一人いるだけです。網走の向こうには知床半島がかすかに見え
ます。そして今回は両手でも余るほどの流木を見つけました。誰か
が流木を集めて燃やしたようなあとが残っています。多少荷物にも
なり、重たいのですが、貝殻と二つの小石と一緒に持って帰ること
にしました。

 流木がどこから届いたのか知るよしもありません。そもそもその
前はどこに生えていたのか、どのようにして流木になったのか、ど
れだけ海に浮かんでいたのか、どうしてそのサロマ湖の海辺に辿っ
たのか、知るよしもありません。ただ想像するだけです。海の向こ
うにはロシアの人々が住んでいます。すり鉢に削られて角角が丸く
なっているので、何度かの流氷にもまれた感じです。

 そんな流木を手にすることで、見渡すことのできない海の向こう
に、計り知れない時の先に連れて行かれます。手のなかの流木はど
こか海の匂いがします。その匂いが海の底に連れて行ってくれま
す。知ることのできない時の初めに、見ることもできないこの世界
の広がりの初めに、流木が導いてくれます。不思議にもう一度あの
ヨブに最後の最後に呼びかけられた神のことばが響いてきます。

 あなたは海の源まで行ったことがあるのか。

深い淵の奥底を歩き回ったことがあるのか。

死の門があなたに現れたことがあるのか。

あなたは死の陰の門を見たことがあるのか。

あなたは地の広さを見きわめたことがあるのか。

そのすべてを知っているなら、告げてみよ。(ヨブ38:
16−18)

上沼昌雄記

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