「お寺に掲げられている十字架」2011年10月18日(火)

 2年ほど前に最上川沿いで、温泉に入って地元の農民作家の方と昼食していたときに、この最上川沿いでキリシタン宣教師が迫害のなかを逃げて酒田に下り、日本海を通って、北海道に入り、さらに樺太を通って、シベリヤ経由で本国に帰った話をしてくれました。佐野原というところにそのキリシタンの史跡があるというのです。日本への宣教師家族と結婚した個人的な理由もあって興味を注がれました。戦後の昭和27年にバチカンから米沢の教会に地名などの問い合わせがあって分かったというのです。

 それでこの5月にはその米沢の教会を訪ね、神父さんに問い合わせたのですが、一度火災にあって資料もなく、そのことについては聞いたこともないという、多少素っ気ない返事でした。米沢の市立図書館の担当者も親切に調べてくれましたが、そのことを記している真壁仁という山形の詩人の記述以外に、その元を確認することができませんでした。蔵王の山形芸工大学に真壁仁研究会というのがあって、問い合わせたのですが、真壁仁がどこでそのことを知ったのか分かりませんと言うことでした。

 先週末から最上川の隠れ家の周りで展開している活動の一つとして、土曜の夜の男性集会、日曜の教会での礼拝に、この農民作家と彼を紹介してくれた東京のフリーランス・ライターの方が一緒に参加してくださいました。そしてこの農民作家の配慮で昨日、佐野原のキリシタン跡を訪ねることになりました。この白鷹町の郷土史研究家が十字架に見える灯籠や、切支丹処刑後と言われる供養塔や、切支丹屋敷跡を見せてくださいました。それらはしかし、伝承として言い伝えられているだけで物的な証拠はないのです。

 最後に切支丹が宗門改めをした文章が掲げられているという真言宗の称名寺というお寺に連れて行ってくれました。すでに住職さんと連絡が付いているようで、自由に観てくださいということでした。その文章の起請文がそのまま掲げられていましたが、その脇に10センチほどの海外で鋳造されたという十字架が掲げられていました。頭部には「ナザレの町で生まれたユダヤの王イエス Iesus Nazareus Rex Iudaeorum」の頭文字 INRI が記されています。お寺に掲げられている十字架です。紛れもない物的証拠です。しかも称名寺の案内書にはその十字架の写真が掲げられているのです。フリーランス・ライターの方は前日の夜に一緒に読んだロマ書10章18節の「その声は全地に響き渡り」そのままだと感激していました。

 そしてこの住職さんの説明に真壁仁が言っていることと同じ、宣教師が逃げて、戦後にバチカンから米沢の教会に問い合わせがあって分かったということがあって、それはどのようにして分かったのでしょうかとお伺いしましたら、ここでは何ですからといわれて、居間に招いてくださいました。話を総合すると前の住職さんの時に、真壁仁が訪ねてきてその話を聞いていたようです。前の住職さんはすでに亡くなられていて、それ以上分からないのですが、多分地元ではその話は確かなこととして伝わっていたのでしょう。

 一度は行き詰まってしまったことなのですが、地元に伺ってその話の事実性に感触として近づいた感じがしています。農民作家とフリーランス・ライターの方が知恵を出してくださり、その昭和27年の山形新聞とその宣教師のイエズス会本部とバチカン大使館に当たってみようとなりました。どうなるか分からないのですが、400年前にただ宣教師が迫害を逃れて信じられない逃避行をしてバチカンまで戻ったということに、少しでも近づくことができればと願っているのです。そんな歴史がこの日本で確かに起こったこととして確認したいのです。それだけなのですが、それは自分のなかの何かの存在証明を証したいからなのだろうと思います。

上沼昌雄記

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「「お寺に掲げられている十字架」2011年10月18日(火)」への1件のフィードバック

  1. 「お寺に掲げられている十字架」を読ませていただきました。
    400年前のことを思い巡らせています。逃避行を決断したこころ、逃げている間に去来する葛藤、バチカンについてからそれからのことを思い巡らせています。
    二つの祖国をもつこころを思っています。自分の居場所はいったいどこなのだろうか、自分はいったいなにものだろうか、そんな問いがあります。
    一人の人生の歴史を追うことでまた自分を確かめる作業が深まりますね。

    教会の図書室から一冊の本を借りました。
    ヘンリ・ナウエンの『放蕩息子の帰郷』です。レンブラントの絵が表紙を飾っています。

    一枚の絵にまつわるナウエンの深い霊想の旅を味わっています。
    闇から光にむかう旅に同行することで、弟のような自分、兄のような自分をみつめながら「父への帰還」という旅を味わっています。

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