「パウロの観たクリスマス」2011年12月15日(木)

神学モノローグ

両親の住まいから数ブロック離れた街路樹に、数年前から、この時期になるとイルミネーションが取り付けられて、家々のクリスマス・デコレーションとあわせて、このシーズンの雰囲気をもり立てている。その範囲が年々広がってきて両親の家の近くの街路樹にも取り付けられ、窓からも見えるようになった。そんなことが地元の新聞に報道されて、毎晩のように見物人が訪れている。教会では先週の土曜の夜に2時間近いクリスマス・コンサートを催していた。正装した聖歌隊に、近くのカレッジの合唱団も加わって、聞き慣れた降誕祭の曲を見事に歌い上げていた。

年をとったためにへそ曲がりになったのか、元々そうなのか、ともかくパウロのユダヤ性を考えるようになって、はて、あのパウロがこのクリスマスを観たとしたらどんな思いになっただろうかと、そんな問いかけが繰り返し出てきた。確かにルカ福音書に書かれているように、御子の誕生を喜ぶことは聖書の示しているとおりである。その降誕祭が西洋のキリスト教会で大きな意味をもってきた。まったく同じようにパウロも理解していたと勝手に思ってしまう。果たしてそうなのだろうかと考えてしまう。

パウロのキリスト理解の枠はローマ書の初めに良く出ている。「御子は、肉によればダビデの子孫として生まれ、聖い御霊によれば、死者の中からの復活により、、、公に神の御子として示された方」(1章4節)、これが福音であるという。この枠はピリピ書の2章のいわゆる「キリストの謙卑」と言われるところでも明確に表されている。キリストは、「ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、、、死にまで従い、実に十字架の死にまで従われた」(7,8節)こと、それに報いるように「神は、キリストを高く上げて」(9節)くださった。

すなわち、受肉と十字架と復活がしっかりと結びついている。切り離されていない。降誕節だけが突出してはない。しかも、復活で神の子として公に示されたというのは、パウロ自身の体験にも深く結びついている。その始まりがダビデの子孫として生まれキリストである。まさにユダヤ人であることに根付いている。自分と同じ民である。そのキリストが復活を通すことで神のこと公に示された。この受肉と復活、その中に十字架をみるという枠がパウロの中でいつも生きている。

この枠がしっかりとしているので、その先を引き延ばして、そのキリストがピリピ書では「神のみ姿にあられる方」(2章6節)と言い、コロサイ書では、「万物は御子にあって造られた」(1章16節)とまで言い、1コリント15章では、いわゆる第二のアダムとして捉えている。すなわち、ダビデの子孫として生まれ方が、第二のアダムとして遣わされたと観ていく。 第一のアダムのゆえになしえなかったことを神はご自分の御子を通してなされたと捉える。 ローマ書8章3節のパウロの受肉論の神髄である。 何とも強靱な思考である。

同じことがコロサイ書でも繰り返されている。「今は神は、御子の肉のからだにおいて、しかもその死によって、あなたがたをご自分と和解させてくださいました。」(1章22節)パウロにおいて受肉と十字架はすぐそばである。すなわち、ダビデの子孫として生まれたキリストは、私たちのために十字架にかかるためであった。十字架の死を受肉のすぐ向こうに見ている。それゆえに、受肉はなんと言っても厳粛なことである。

取りも直さず、受肉はまさに自分の罪のためである。自分の罪であり、全人類の罪である。私たちの身代わりとなるために生まれたのである。その意味では、御子の誕生は喜んでいられない悲壮なものである。十字架をすぐそこに見ているので降誕だけを切り離して喜んでいるわけに行かない。しかし、その十字架の死の向こうに勝利を観ている。そこで初めて受肉の目的が完成する。喜びをようやく覚える。

2千年の西洋の教会で捉えられてきたものが主導になって、その上で聖書を見ていく。それが聖書のすべてだと思ってしまう。避けられないと言えば避けられない。それでも、そうでない面がある。教会があまりにも西洋的な思考に動かされてきたためなのではないだろうか。聖書のなかのユダヤ的な面を真剣に捉えたら見落としてきたものが多くあることに気づく。街路樹に輝くクリスマス・イルミネーションを観て、教会のクリスマス・コンサートの場に居合わせて、パウロは居心地の悪さを感じていた。

上沼昌雄記

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