「水晶の夜」2013年11月11日(月)

 昨晩10時のテレビニュースを観ていたときに、75年前の 
1938年11月9日の夜から10日にかけてのドイツで 
のユダヤ人に対する暴動からアメリカに逃れた人のことが取り上げ 
られていました。「水晶の夜事件」と呼ばれるもので、破壊された 
ショウウインドーやシナゴーグのガラスの山が水晶のように輝いて 
いたという、とんでもない侮辱を込めて言われたことです。実際に 
はナチの官憲による事件で、それを契機にドイツはホロコストに突 
き進んでいったのです。

 75年前のこの事件がアメリカで取り上げられて、日曜の夜 
のテレビに出てきたことに、良くもしっかりと取り上げたものだと 
驚きました。日本のメディアで取り上げられているのか興味があっ 
てネットで調べてみたら、時事通信が取り上げているようです。ド 
イツではその記念館に大統領が記帳に訪ねていると言うことで 
す。75年前ですので、第二次世界大戦の前に起こったことです。

 この「水晶の夜・クリスタルナハト」という言葉を、10月 
の半ばに、札幌郊外の江別市に退いているマラーノ研究家の小岸昭 
氏を訪ねたときにも聞いたことを思い出します。1492年にス 
ペインとポルトガルからカトリックによって追放されることになっ 
たユダヤ人で、表面上カトリックに改宗した人をマラーノ・豚と呼 
んだのです。そのマラーノたちの行く末を追跡しながら訪ねた研究 
書を通して小岸氏の業績を知ることになり、機会をいただいてお話 
を聞くことができました。

 マラーノたちの行く末とは、追放されて離散して、地理的に広範 
囲に広がっているだけではなく、時間的にも数百年という単位で 
後々に影響している痕跡です。それは隠れた歴史の爪痕のようなも 
ので、表面には出て来ないことです。それを根気よく訪ねていく小 
岸氏の研究書は、歴史の裏側に引き込まれるものです。そんな苦労 
話を伺っているときに「水晶の夜」のことが出てきました。それが 
耳に残っていたのですが、公には聞くこともないのだろうと思って 
いたので、昨晩のニュースには驚かされました。

 キリスト教の正統派という中にいても、というのが正確なのか、 
逆にそれゆえに、というのが適切なのか、マラーのことを聞いたこ 
ともなく、ましてはキリスト教が抱えている反ユダヤ主義について 
も聞くこともありませんでした。それは隠され、隠れているので 
す。それがユダヤ人哲学者であるレヴィナスの著作を読み、マラー 
ノの現実を知ることになって、2千年の西洋のキリスト教が初 
めから抱えていることであり、ホロコストとして西洋のキリスト教 
世界で起こったことを知ることになったのです。「水晶の夜事件」 
はその流れの中で起こったことです。すなわち、西洋の伝統的な聖 
書理解に支えられた文明の中で起こったことです。

 このことを真剣に取り上げて、西洋の土壌で聖書を捉え直してい 
るイギリスの聖書学者がいます。今回の日本でもその研究会として 
2回目のN.T.ライトセミナーを持ちました。N.T.ライト 
を真剣に取り上げている人が日本でも増えています。折しも新しい 
学術書が11月の始めに発刊されました。Paul and the 
Faithfulness of Godというタイトルで、1660頁にわたる大著 
です。N.T.ライトのパウロ研究の集大成のようです。

 この大著をどのように読んだらよいのか悩むのですが、幸いにそ 
の序論で全体の流れを説明してくれて、最初の章と最後の章が対応 
していることが分かり、多少ずるいやり方なのですが、1章を 
読み終えて、最後の16章を読んでいます。結論に当たるこの 
最後の章の初めに、2千年にわたるキリスト教の反ユダヤ主義 
の起源と、それに基づいた西洋の伝統的な聖書理解に言及していま 
す。このことはここで初めて取り上げられているのではなく、多く 
の著書で繰り返し取り上げられています。西洋の正統的な伝統的な 
聖書理解に潜んでいる反ユダヤ主義です。

 N.T.ライトがこのことに結構神経を使っていることが分か 
ります。むしろ死活問題として取り上げているのかも知れません。 
そしてそれゆえに、パウロ神学のためにこれほどまでに厳密で誠実 
な聖書解釈を試みていると言えます。その意味では、N.T.ラ 
イトは聖書学者であり、同時に歴史学者でもあります。初代教会か 
ら始まる聖書理解が歴史に及ぼした痕跡をしっかりと見定めていま 
す。それゆえに、歴史から浮き上がった聖書理解ではなく、歴史に 
方向を定めていく聖書理解を見据え、全力を注いでいます。なすべ 
き責任がまだあることを教えてくれます。

上沼昌雄記
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