「孤絶」2014年12月15日(月) – ウイークリー瞑想

 11月3日(文化の日)はクラーク聖書研究会50 
周年記念集会でした。その前日に大阪の友人が、明日の朝の「毎日 
新聞」に村上春樹の単独インタビューが載ると教えてくれました。 
泊めていただいていた小林牧師と記念集会に行く途中コンビニで 
「毎日新聞」を購入しました。

 記念講演の前に講師紹介と言うことで、小林牧師が私のことを 
「福音の伝道師か、村上春樹の伝道師かどちらかわからない」とい 
う紹介をしてくれました。まだ記事を読んでいなかったのですが、 
「毎日新聞」の単独インタビューのことを話しましたら、終わって 
からすでに読みましたという人に会いました。北海道新聞の記者を 
している人でした。

 この後すぐに家に戻ってきて、義父の看病や、翻訳の最終原稿読 
みとかで、新聞記事をすぐには読めなかったのですが、一段落して 
2週間ほど前にようやく目を通すことができました。記事のタイトル 
は「『孤絶』超え 理想主義へ」となっていました。その「孤絶」 
のことで続いて考えているというか、どのような意味合いなのか思 
い巡らし、妻とも語り合っています。

 この4月に出た短編集『女のいない男たち』に関しての質問 
に村上春樹が答えています。「ここでは『孤絶』が一つのテーマに 
なっています。女の人に去られた男の話が中心ですが、具体的な女 
性というよりは『自分にとって必須なもの』が欠如し消滅し、孤絶 
感を抱え込むことの表象だと思っています。」「ある年齢以上にな 
ると、孤独は『孤絶』に近いものになる。そういう風景みたいなも 
のを書いてみたかった。」

 なるほどと思ってもう一度その短編集を読んでみました。自分に 
とって必須なものが欠如し消滅した孤絶の風景、それは、どんなに 
振り返り取り返したいと思ってもすでに手の届かない世界、それゆ 
えにバランスを欠き自分がどこに行くのか分からないで不安を抱え 
ている世界、外見をどのように繕ってもいずれはその空虚さが暴露 
する世界、垣根を失い他人が通過していくだけの世界、何がそこに 
入ってくるか何がそこから出てくるか分からないうつろな世界、そ 
れでもなお失ったものを求めている世界、と言えるのでしょうか。 
やはり闇の世界。

 義父は確実に弱ってきています。痛みもコントロールを超えて出 
てきます。痛みは他人が入ることのでない世界です。自分にとって 
必須であった自由を失います。病と痛みに釘付けされます。ホルモ 
ン治療をしているのですが、それがどのようなもので、どのような 
影響を及ぼしているのか想像できません。ただ孤絶感に閉じ込めら 
れます。

 現在は三人の娘が看病に当たっています。しかしある夜更けに、 
自分にとって一番身近なものが分かっていないと涙を流したことが 
あります。それは周りにいる私たちは分かっていることでしたが、 
やはり直接に父の口から出てきたことで、凍り付くような孤絶感が 
伝わってきました。妻はしかし、それは自分が病になったときにも 
自分の感じたことがと言われ、背筋が寒くなるような思いにさせら 
れました。

 ここに来て思わされるのはやはりヨブの孤絶感です。所有物も家 
族も失い、その上妻から呪いをかけられます。まさに「女のいない 
男たち」の代表格です。さらに慰めに来た三人の友からヨブは二重 
の苦しみを受けます。これがヨブの孤絶の風景と言えるとすると、 
どうしてもなぜヨブ記が聖書に置かれているのかと、どうしても拭 
えない思いが浮かんできます。

 それでもあえてヨブを孤絶の状態に置くことが神の導きだとする 
と、そうすることが神の民にとっても避けられない道行きであると 
も言えそうです。ある面で正しい人が理由なしに苦しみを受ける、 
それは御子イエスにおいても成されたことです。そして神は嵐のな 
かからヨブに答えられます。神は御子イエスを死者の中からよみが 
えらせます。

 「自分にとって必須なもの」を失うこと、それは外的なものだけ 
でなく、自分のなかで後生大事に抱え込んでいて、それなしでは 
やっていけないと思っていることを失うことでもあります。信仰者 
にとっては避けられないことです。孤絶感は私たち信仰者の「手前 
に」あるいは「その向こうに」ひっそりと潜んでいます。そしてそ 
の孤絶感の中でのみ神は答えられるかのようです。

上沼昌雄記

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