「自分の十字架を負って、と言われるのですが」2016年8月26日(金)

 子どもたちを通して私たちより少し年配のご夫妻、ジムとバーバラ、と知り合いました。奥様のバーバラが、大脳皮質基底核変性症(Cortico Basal Syndrome/Cortico Basal Degeneration)という病気を患っていて、その試験的治療のためにヴァージニア州からUSサンフランシスコ大学病院で来ています。3週間おきの投与が年末まで続きます。その間の宿舎が必要で、3年前にご主人をなくされた奥様が申し出てくれて、先週末から滞在を始めました。

 症状はパーキンソンに似ていて、体の機能が低下して行きます。すでに車いすですべてをジムが面倒見ています。ジムが食べさせたものは咀嚼できます。それ以外はすべてジムに頼る状態です。それでもバーバラは誰かのためになればと願って、この試験的治療を受けることにしました。この試験的治療は、Randomized Double Blindと呼ばれているようで、11人受けている中の3人は試験的薬ではなくて単なる液体のようです。それが誰なのかは医師も患者も分からないというシステムで、それでDouble Blindと呼ばれるとルイーズが説明してくれました。

 ともかく見ていてこのご夫妻は信じて臆することなく前進しています。その姿は痛々しいのですが、本人たちは当然のように受け止めています。それは正直衝撃です。そんなことができるかどうか自信がありません。滞在している家は居間が2段ほど下がったところにあります。廊下まで車いすで来て、そこからどうするのかと思ったら、ジムがバーバラを肩車でソファーまで運んだのです。当たり前のように座って、ルイーズのピアノをご夫婦で楽しんでいました。

 滞在しているお宅の近くにみくにレストランのローズビル店があり、一昨日一緒にランチを食べに行きました。ルイーズがバーバラを食べさせている間、ジムは神学的な質問をしてくるのです。みくにレストランの創業者の荒井牧師のことも感心していました。奥様の面倒で頭が回らないのではと思うのですが、パウロのギリシャ哲学の関係についてどう思うかと聞いてくるのです。ジムはアメリカ空軍のテストパイロットをしていました。その後弁護士になりました。ですので、体力もありますし、弁護士としてのメンタリティーで納得の出来ないことは何度も丁寧に聞いてくるのです。

 明日知人の葬儀のために、ジムは今日バーバラを連れてサンディエゴ郊外にドライブしていきます。10時間はかかるドライブです。明日の葬儀の後夜の飛行機で一度ヴァージニア州の家に10日間ほど戻り、9月始めにまた次の試験的投与のために戻ってきます。機内でジムはバーバラをどのように手洗いに連れて行くのだろう、と想像するのですが、ルイーズも分からないと返事をするだけです。

 普通ならと言うか、自分なら、気落ちして、ただ家に閉じこもってしまうのではないかと思うのですが、ジムとバーバラはそれが当たり前のように前進します。ジムの口から愚痴の一言も出てきません。同情を求める仕草もありません。ルイーズが持っていった料理に対する感謝の言葉が出てきます。合間に余裕があると神学論議の続きを始めるのです。「自分の十字架を負って」を言われるのですが、ジムとバーバラと身近に接して、こういうことなのだろうと衝撃を受けています。

 彼らの息子さんと私たちの義樹が海軍兵学校で一緒でした。そんなことで関わりが始まりました。ヴァージニア州では次女の泉が比較的近くに住んでいてよく食事を作って運んでいます。その泉がクエートでの仕事を終えて9月1日に戻ってきます。ジムとバーバラに会えるのを楽しみにしています。

上沼昌雄記

Masao Uenuma, Th.D.
muenuma@earthlink.net
masaouenuma@yahoo.co.jp
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