ウイークリー瞑想 「良くない思いに引き渡され」2017年2月2日(木

「また、彼らが神を知ろうとしたがらないので、神は彼らを良くない思いに引き渡され」(ローマ書1章28節)は、その前に24節で「それゆえ、神は、彼らをその心の欲望のままに汚れに引き渡され」、26節で「こういうわけで、神は彼らを恥ずべき情欲に引き渡され」に続いて言われている箇所です。おそらく前の二つの節に引きずられて「良くない思い」と道徳的な意味で解釈され、訳されているのだと思います。

千葉教授のローマ書の意味論的分析に接していて、多少その意味合いが飲み込めてきました。それは、そこで使われている言語の意味合いに沿って意味を捉えていくことのようです。その具体的な例がこの「良くない思い」の理解に見ることが出来ます。なるべく文字通りに「叡知の機能不全」と訳されて、その意味を明確にしようとされています。それで「良くない思い」と「叡知の機能不全」では同じ原語の訳語としては意味合いが異なっているので、どうしてこれほど違ってくるのか、それなりの格闘をすることになりました。

ひとつ分かったことは、この「良くない思い」のまえに、 「彼らが神を知ろうとしたがらないので」とあるのですが、 「知識において神を持つことを識別しなかったほどに」と文字通りに訳すことができ、この「識別しなかった」の形容詞形がそのまま「良くない思い」に使われていることが分かりました。それで「識別に至らない叡知」「識別しえない叡知」ととることができることです。

「思い」「叡知」と訳される「ヌース」は、新改訳聖書では、「心」「知性」とも訳されています。このヌースは「識別する」という機能と並行して使われています。「心(ヌース)の一新によって自分を変えなさい」(12:2)でもそのまえで、「何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるかをわきまえ知るために」とあって、その「わきまえ知る」「識別する」ためのヌースの一新になるのです。単なる感情・感覚の場としての心ではなく、責任を持って識別していく機能のことを述べていることが分かります。

「弁解の余地はないのです」(1:20,2:1)という宣言がその前後に使われています。特にその前の使われ方ではさらに神から与えられたヌースの責任を述べています。神の見えない本性、永遠の力と神性は創造の時から「被造物によって知られ」と一般的に書いてあるのですが、その「知られ」には千葉訳のように「叡知において知られ」と、その意味合いが明確にされています。それはおそらく、神に造られた人すべてが心のどこかに神のことを識別するヌースが与えられているのにもかかわらず、それを行使しない責任が問われているのです。「彼らには」とあえて三人称で言われているのは意味論的に、まさに「弁解の余地のない」ほどに誰にも問われているからです。

ローマ書1章の後半を読むときにどうしても道徳的な意味合いだけでとってしまいます。道徳的に自分を整えることだけが主眼になります。しかし、その前に神に関する認知的な意味合いが語られていて、しかもそれはすべてに人に問われていて、その責任を行使しない人には神の怒りが、神の義の現れとして啓示されていることが分かります。弁解の余地のないほどに明らかだとパウロは宣言しているのです。それが神のことを識別しない人類の歴史だからです。

そのように読むと今度は、3章21節以下で、神の義の啓示がイエス・キリストの信・信実を通して直接に語られていて、それがもう一つの神の歴史であることが浮かび上がってきます。1章の後半からは神に背いたイスラエルの歴史が全人類の歴史として語られていて、3章21節以降から回復の歴史が「すべて信じる人」の歴史として展開しているようです。千葉教授が主張されるローマ書の意味論的分析が、神の啓示の歴史理解をより明確にしてくます。その歴史理解の上で神の子としての責任が、なおこの変動の時代に問われてきます。日々現実的になってきています。

上沼昌雄記

追伸:この北大の千葉恵教授が、2月14,15日(火、水)と、札幌郊外の石狩にあるCFNJ聖書学院(鍛冶川利文校長)で「パウロ『ローマ書』における信仰義認と予定論」という講義をもってくださいます。関心のある方は学院に直接問い合わせください。(〒061-3216石狩市花川北6条5丁目157 電話:0133-74-1341)

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中