「神の二つの顔のような」2019年6月27日(木)

 今回日本からの友人夫婦とダラスからの義弟夫婦と私たち夫婦の三組で、イエローストーン国立公園とグランドティートン国立公園の旅をすることができました。二つの国立公園ともロッキー山脈の一部で、ワイオミング州の北西に上下して対照的な姿で並んでいます。その広さは日本のいくつかの県を一緒にしたほどです。
 イエローストーンは、地下数キロの所までマグマが迫っているために、熱水が各地で噴水していて、森林に囲まれていながら、活動的で異様な光景を観ることになります。それに対してその南に位置するグランドティートンは、雪をかぶった山並みと、その麓の大平原とそこをゆったりと流れるスネークリバーの静まりかえった美しさに魅了されます。
 イエローストーンには渓谷もあります。両面が黄色になっているためにその名が付けられたようです。そこに落ちる滝は力にみなぎった威力で、私たちを圧倒します。その近くには泥を吹き出す火口もあり、地下からの響きも聞こえます。グランドティートンの麓の湖は、その山並みを湖面に逆さまに映し出し、幻想的な雰囲気になります。その湖の一つのジャニーレイクの脇の散歩道は、湖水を観ながらゆったりとした思いにしてくれます。
 イエローストーンにいると、地下からの叫びが大きな空に吸収されているような気になります。また大きな空が地下深くまで届いているかのようです。時間通りに熱水を噴水するオールド・フェイスフルの間欠泉は、天と地が結び合っているかのようです。グランドティートンにいると、地が天に抱かれ、天がそれをゆったりと眺めているような気になります。「変貌山のチャペル」の礼拝堂の講壇の後ろの小さな窓に映し出されるグランドティートンの山並みを眺めていると、天からの声が聞こえてくるようです。
 イエローストーンとグランドティートンの対照的な神の作品に接しながら、毎晩詩篇を日本語と英語で読んで、その日の印象と受けたインパクトを分かちあう時を持ちました。この三組の夫婦の合流自体不思議なことなのですが、イエローストーンとグランドティートンを造られた神の下では、そのことも初めから神の御手の中にあることと自然に受け入れることできます。
 神が力を持って働かれるときは、あの大滝のような威力を持って事をなし、その反面ではあたかも何もなかったかのように静まりかえって、ただ湖水に写るようにその結果を眺めておられるかのようです。それはただ、神に組み込まれている私たちを眺めておられる神の二つの顔なのでしょう。
 イエローストーン国立公園とグランドティートン国立公園がどのようなものなのか、実際にはよく分からないで出かけたのですが、旅を終えていろいろな場面を振り返る度に、この対照的な二つの自然が人間の現実をも語っているのだろうと思わされています。
 上沼昌雄記

「熊の置き土産」2019年6月10日(月)

 夏の山火事の心配があるので、少しでも家の周りを綺麗にしておこうと思って週末に作業をしました。終わってルイーズが様子を見に来たのですが、私のした作業現場ではなくて、隣の人との通路になっているところに何かあるので見るようにと言うことでした。明らかに大きな動物の置き土産でした。すでに乾燥していて灰色かかっていました。マウンテンライオンの可能性もあるので心配になりました。
 その隣の人の奥様が動物の足跡とか糞を図鑑で調べることをしているので、昨日日曜の午後にお願いして見ていただきました。その糞の大きさには驚いたようですが、ご主人はすぐに熊の糞だと言ってくれました。マウンテンライオンは肉食ですが、熊はゴミもあさるので、その糞の中にプラスティックのようなものがあるのはそのしるしだと教えてくれました。そしてその糞がある隣の木に熊がひっかいた痕もあって、結構な高さにも痕があるので大きな熊だと手真似をして教えてくれました。
 このご夫妻は日曜の夕方には聖書研究の交わりがあるのですが、今日はないと言うことと、ご主人が学校の先生をされていてちょうど夏休みになったところだと言うことで、お互いにその休みに掛けての旅行の話から始まって、それぞれの身の回りで起こったことを語り合うことになりました。まだ真夏の暑さではなく、夕方の涼しい風も吹いてきて、熊もマウンテンライオンも鹿も狐も狸もリスも野生の七面鳥も、自分たちの世界だと思っている自然の中で語り合うことになりました。2時間ほどいたことになります。
 このご主人はかつてはウィックリフの宣教師になろうとしたのですが、健康の理由で断念して、お巡りさんになり、いま先生をしています。息子さん夫婦を交通事故で亡くしています。その保険金で息子さんも好きだったバイクを購入して学校への往き帰りに使っています。その美しいヨーロッパ製のバイクの音で彼が帰ってくるのが分かります。
 私たちが家を留守にして帰ってくる前には、必ず私たちの敷地に入ってドライブウエイを綺麗にしてくれます。落ち葉がたまったままだと留守だと分かって不始末なので、綺麗にしていると理由付けをしてくれます。そんなこともあって私たちの建物の入り口と裏の窓際のデッキが古くて心配だと言うことで、昨年秋に自分たちの聖書研究に大工さんがいるからと言って送ってくれました。
 子供さんのいない叔父様が亡くなられ、その面倒と後始末をされてこられたことで遺産が入るので、その10分の1を神様のために使いたいが、神様のために働いているあなたがたのために使いたいということでした。25年ほど前になんとか自分で建てた家ですが、雨さらしにされたデッキはボロボロで危ない状態でした。神様が天使を送って美しいデッキを作ってくれたのでした。
 そんなこともあるのですが、決して押しつけがましいところがなく、私たちが以前は父のことで家を長期留守にしたことも、今回も母に会いに短期間で出かけていったことにも心を留めてくれています。私たちも彼らのために毎日祈っています。今回熊が置き土産を残していってくれたので、それを確認することから始まって、日曜の午後大きな自然の中で隣人との主にある歓談の一時をいただいたのでした。
 上沼昌雄記